介護でAIは何に使える?活用例・デメリットと注意点・補助金の使い方

この記事を読むと分かること
「記録や申し送りの入力に追われて、利用者と話す時間が取れない」。「介護ソフトの会社からAI機能の案内が届いたが、現場の何に使えるのか分からない」。介護にAIを使うことを考えるきっかけは、このような状況から生まれます。
この記事は、介護事業所でAIの導入を考えている経営者、管理者、DXの担当者の方に向けて書いています。介護の仕事に就きたい方に向けた内容(資格や働き方)は扱っていません。
介護でAIが使えるのは、記録・申し送り・会議録などの文章づくり、夜間の見守りと排泄の予測、ケアプランやシフトの叩き台の3つの系統で、利用者のケアの判断は職員に残ります。自社で進めるか外に相談するかは、どの業務から始めるかを決める人と、AIが出した答えを確かめる人が事業所の中にいるかどうかで分かれます。この記事で扱うのは、介護でAIに任せられる業務と注意点、国の補助金の仕組み、相談先の選び方です。数字と制度は、厚生労働省の資料をもとにしています。
AIの導入を支援する会社を比べたい方は、AI導入支援のおすすめ11選で各社の料金と導入事例を紹介しています。

1. 介護のAIとは
介護のAIとは、センサーや記録のデータ、職員の話した言葉をもとに、見守りや記録、計画づくりの一部を職員の代わりに行う技術のことです。人手不足が続く介護の現場で、記録や見回りにかかる時間を減らし、職員の負担を軽くする目的で使われています。介護以外の業種でのAIの使い方は不動産会社でAIは何に使えるかと建設業でAIは何に使えるかで解説しています。
介護で使われるAIは4種類
介護で使われるAIは、大きく次の4種類です。同じ「AI」でも、機器に入っているものと、ソフトやアプリとして使うものがあります。
- 見守り機器やセンサーに入っているAI:ベッドのセンサーやカメラの情報から、離床や転倒につながる動き、睡眠の状態、排泄のタイミングを検知して職員に知らせる
- 介護ソフトに入っているAI:職員が話した内容を記録の文章にする、過去の記録をもとにケアプランや計画書の叩き台を作る
- 生成AI:文章の生成や要約、翻訳を行う。会議録の要約、家族への連絡文、研修資料の叩き台に使う
- コミュニケーションロボット:会話やレクリエーションの相手をする。利用者に話しかけ、体操や歌を一緒に行う
国の「介護テクノロジー」との関係
国は、介護の現場で使う機器やソフトをまとめて「介護テクノロジー」と呼んでいます。経済産業省と厚生労働省は、2024年6月に「介護テクノロジー利用の重点分野」を改訂しました(厚生労働省の報道発表)。重点分野は、移乗支援、見守り・コミュニケーション、介護業務支援、認知症生活支援・認知症ケア支援などの9分野16項目です。記録や情報共有を行う介護ソフトは、このうちの「介護業務支援」に入ります。
介護ロボットとAIは、別のものとして語られることがあります。介護ロボットは、移乗や入浴を助ける機械まで含む機器の呼び方です。AIは、介護ロボットや見守り機器、介護ソフトの中で、データから判断して職員に知らせる仕組みを指します。重点分野は、移乗や見守りのような機器の役割で分かれていて、AIが入っているかどうかでは分けていません。介護ロボットの補助は重点分野に当てはまるかで、介護ソフトやインカムの補助は機器の種類で、対象が決まります(5章「介護でAIを入れる費用と補助金」で解説します)。
2. 介護でAIに任せられる業務

介護でAIが使えるのは、記録・申し送り・会議録などの文章づくり、夜間の見守りと排泄の予測、ケアプランやシフトの叩き台の3つの系統です。どの業務でも、AIが出したものを職員が確かめてから使います。国の表彰を受けた施設では、夜勤の巡視時間が半分になった例や、夜間の尿便漏れが週14回から週2回に減った例が公表されています。ここでは業務ごとに、AIが行うことと職員が見ることをセットにして解説します。
記録と申し送り、会議録
職員がスマートフォンやインカムに話した内容を、AIが記録の文章に整えて介護ソフトに入れます。申し送りやサービス担当者会議の音声を文字にして、要点をまとめる使い方もあります。記録を書くために事務所に戻る時間や、勤務の終わりにまとめて入力する時間が減るのが利点です。
職員が見るのは、AIが文章を整えるときに足した言葉と、事実と違う箇所です。「食事は8割」「表情が硬い」のような観察の中身は、話した職員にしか分からないので、記録を確定する前に話した職員が読み直します。
夜間の見守りと排泄の予測
見守り機器のAIは、ベッドのセンサーやカメラから離床や転倒の兆候を検知し、職員のスマートフォンに知らせます。排泄の予測で使うのは、排泄を予測または検知して、排泄のタイミングの把握やトイレへの誘導を支える機器です。通知を受けて駆けつける運用にすると、定時に全部の部屋を回る巡視の時間を減らせます。
通知を受けてから駆けつけるのは職員です。センサーが検知できない動きもあるため、通知がなくても夜間に何時に誰が見回るかを決めておくことが必要です。
ケアプランと計画書の叩き台
ケアプランや個別の介護計画書では、利用者の状態や過去の記録をもとに、AIが目標やサービス内容の叩き台を作ります。ケアマネジャーが白紙から書く時間を減らせるのが利点です。
利用者本人と家族の希望の確認と、計画の最終的な判断は、ケアマネジャーや計画の担当者が行います。利用者本人の思いは、過去の記録に書かれていなければAIの叩き台に反映されないため、面談で聞いた内容を足して仕上げます。
シフトと送迎ルート
シフト作成では、職員の勤務の希望や資格、必要な人員配置をもとに、AIが勤務表の叩き台を作ります。デイサービスの送迎では、利用者の住所と時間の希望から、車ごとの回り方の案を出します。
夜勤の回数の偏りや、職員同士の組み合わせのような事業所ごとの事情は、管理者が最後に調整します。勤務の条件を言語化して入力しておくほど、AIの叩き台を直す手間は少なくなります。
家族への連絡文、研修資料、外国人職員への説明
生成AIは、家族に送る近況の報告文、職員向けの研修資料やマニュアルの叩き台、外国人職員に向けた注意事項の翻訳に使えます。介護ソフトや見守り機器を入れていない事業所でも、生成AIなら文章の業務から試せます。
生成AIに利用者の氏名や病歴を入力すると、個人情報が事業所の外のサービスに送られます。名前を伏せて入力する、事業所で契約したサービスだけを使う、といったルールを先に整備してから使い始めます。
会話とレクリエーション
コミュニケーションロボットは、利用者に話しかけ、体操や歌、クイズを一緒に行います。職員が他の利用者の介助に入っている時間に、会話やレクリエーションの相手を任せる使い方です。利用者の表情の変化や体調の異変に気づいて対応するのは、そばにいる職員の役割です。
国の表彰を受けた施設の事例
厚生労働省の令和7年度の表彰では、夜勤の巡視時間を53分から26分に減らした施設があります。AI排泄ケアシステムを入れた施設では、夜間の尿便漏れが週14回から週2回になりました。「介護職員の働きやすい職場環境づくり」内閣総理大臣表彰と厚生労働大臣表彰を受けた事業所のうち、介護テクノロジーを使った取り組みを公表資料から紹介します。
- 特別養護老人ホームサンシティ北条(愛媛県松山市):厚生労働大臣表彰 優良賞。AI排泄ケアシステムを入れ、夜間帯1フロアあたりの尿便漏れの回数が週14回から週2回に減った
- 特別養護老人ホームもくせい(茨城県水戸市):内閣総理大臣表彰。過去に入れた見守り機器を使い直して夜間の宿直をなくし、夜勤の巡視時間が53分から26分に、排泄介助の時間が180分から90分に減った
- リハビリセンターグリーンTAOKA(徳島県徳島市):厚生労働大臣表彰 優良賞。インカム、記録ソフト、見守り機器を入れて情報共有を進め、フロアの巡視にかかる時間が30分(令和2年)から5分(令和6年)に減った
出典:厚生労働省「テクノロジー等を活用した介護現場における生産性向上の重要性とその施策について」(令和8年3月2日)
3つの施設は、巡視や介助にかかる時間、夜間の対応の回数を、導入の前と後で数字にして示しています。自分の事業所でAIを試すときも、記録や巡視にかかる時間を導入の前に測っておくと、変化を数字で確かめられます。
3. 介護AIの主なサービス
介護の現場向けのAIサービスは、記録とケアプランの作成、見守りと排泄の検知、会話・シフト・送迎の3つの分野で出ています。ここでは、提供会社の公式サイトでAIを使った機能が説明されているサービスを、分野ごとに紹介します。表の内容は各社の公式サイトの記載で、順不同です。料金は、利用人数や機器の台数によって変わるものが多いため、表には載せていません。
記録とケアプランの作成
職員が話した内容を記録の文章にするサービスと、ケアプランの叩き台を作るサービスです。今使っている介護ソフトとつながるかどうかで、選べるサービスが変わります。
| サービス名(提供会社) | AIで行うこと | 公式サイトの事例 |
|---|---|---|
| ミルモレコーダー(株式会社ウェルモ) | 会話の録音を文字にして、支援経過記録やケアプランなどのひな形に沿って要約する。介護ソフトへの自動転記はオプション | 合同会社わかばケア: 記録業務を95%削減(2025年3月) |
| CareViewer(株式会社さくらコミュニティサービス) | 音声入力で記録を作る。アセスメント、介護計画書、モニタリングをAIが作成し、健康の変化を予測する。計画書などのAIは、スタンダードプランに追加するオプション | 導入事例を公式サイトで 公開している |
| SOIN(株式会社シーディーアイ) | アセスメントの課題を分析し、約1年後の要介護度を予測して、ケアプランの原案を作る。会議の録音から議事録も作る | ケアマネジャーの声を 公式サイトで公開している |
| ほのぼのVoice(NDソフトウェア株式会社) | 介護用語に合わせたAIの音声認識で、記録の入力と確認を行う。同姓同名の利用者がいると確認を求める | 介護ソフト「ほのぼの」 シリーズとの併用が前提 |
| AIケアプラン・音声記録AIオプション(株式会社ワイズマン) | SOINと連携してケアプランの作成を支える。インカムのアプリ「BONX WORK」で話した内容から、AIが介護記録を作る(2026年3月リリース) | ワイズマンの介護ソフトの 機能として提供 |
| ハナスト(株式会社ケアコネクトジャパン) | 利用者の名前と介助の内容を話すと、AIが記録に関わる言葉を読み取って記録カードにする | 介護ソフト「CAREKARTE」 との併用が前提 |
見守りと排泄の検知
カメラやセンサーの情報をAIが分析し、転倒や離床、排泄を職員のスマートフォンに知らせるサービスです。新しくカメラを付けるものと、今ある防犯カメラを使うものがあります。
| サービス名(提供会社) | AIで行うこと | 公式サイトの事例 |
|---|---|---|
| HitomeQ ケアサポート(コニカミノルタQOLソリューションズ株式会社) | 天井のカメラと行動分析AIで、起床、離床、転倒・転落を検知して職員のスマートフォンに知らせる | 住宅型有料老人ホーム「蔵」: 年間の転倒事故10件が1件に(2026年7月) |
| 眠りSCAN・眠りCONNECT(パラマウントベッド株式会社) | ベッドの体動センサーで睡眠、呼吸、心拍を測る。14日間の呼吸と心拍の日誌をAIが分析し、変化を知らせる | 導入事例を公式サイトで 公開している |
| LIFELENS(パナソニック ホールディングス株式会社) | AIセンシングカメラと体動センサーで居室を見守る。追加のアプリで、トイレの出入りをAIが検知する機能を2026年3月に追加 | 導入事例を公式サイトで 公開している |
| ライフリズムナビ+Dr.(エコナビスタ株式会社) | マットレスの下のセンサーで睡眠、体動、心拍、呼吸を測り、ほかのセンサーの情報と合わせてAIが解析する | 導入施設のインタビューを 公式サイトで公開している |
| asilla care(株式会社アジラ) | 施設に今ある防犯カメラの映像をAIが解析し、転倒、徘徊、ふらつきを検知する | 介護施設での実証の記事を 公式サイトで公開している |
| Voxela VCare(株式会社ヴォクセラ・ジャパン) | カメラの映像をAIが解析し、転倒や徘徊を検知して知らせる。事故が起きたときの事故報告書もAIが作る | 導入事例を公式サイトで 公開している |
| Helppad(株式会社aba) | においや湿度、温度のデータから、AIが尿と便を検知し、おむつ交換のタイミングを知らせる | 2章の表彰施設サンシティ北条 の事例を公開している |
会話、シフト、送迎
利用者の会話やレクリエーションの相手をするロボットと、シフトや送迎の計画を作るサービスです。シフトと送迎は、管理者や事務の職員の作業時間を減らす使い方です。
| サービス名(提供会社) | AIで行うこと | 公式サイトの事例 |
|---|---|---|
| Pepper+(ソフトバンクロボティクス株式会社) | ChatGPTを搭載した会話機能で利用者と話す。昭和の暮らしやエンタメをテーマにしたクイズをAIが作る | 介護施設の導入事例を 公式サイトで公開している |
| miramos(コニカミノルタQOLソリューションズ株式会社) | 職員の希望休や夜勤の形、人員基準や加算の要件をもとに、AIがシフトを作る | 青都荘: シフト作成時間を約70%削減(2024年1月) |
| ナビれる(アビココ株式会社) | 利用者、車、ルートをAIが計算し、デイサービスの送迎表の叩き台を作る | デイサービス向けの サービス |
| AIS Shuttle(株式会社アイ・ストリーム) | 乗り降りの地点と車の情報から、送迎の計画とルートをAIが作る(2026年6月リリース) | 介護・福祉施設向けの サービス |
どのサービスも、AIが出した記録や通知、計画を職員が確かめてから使う前提で作られています。サービスを比べるときは、今の介護ソフトとつながるか、5章「介護でAIを入れる費用と補助金」の補助の対象になるかを、提供会社に確認すると選びやすくなります。
4. 介護でAIを入れるときのデメリットと注意点

介護施設がAIを入れるときは、情報を入れるルール、答えを確かめる職員、使い続けるための研修の3つを、機器より先に決めておく必要があります。どれも、機器やソフトの性能では補えないためです。
- 利用者の情報をAIに入れるには、事業所のルールが必要です。介護の記録には病歴や心身の状態が含まれており、個人情報保護委員会と厚生労働省が出している「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」の対象になっています。どのサービスに何を入力して良いか、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっていないかを、使い始める前に整理しておきます
- AIの答えは正しくない場合もあります。生成AIは、事実と違う内容をもっともらしい文章で出すことがあります。服薬、受診、急変時の対応、身体拘束のような利用者の安全に関わる判断はAIに任せず、記録や計画の叩き台は確定の前に担当の職員が読み直す流れにしておくと安心です
- 研修をしないと、現場で使われなくなります。スマートフォンやタブレットに慣れていない職員がいると、入力が一部の職員に集中します。導入の前に現場の職員に試してもらい、使い方を教える担当を選任しておくことが必要です。研修を外に頼むなら、AI研修のおすすめで研修会社を比べられます
- 今の介護ソフトとつながらないと、入力が二重になります。見守り機器や記録のアプリが介護ソフトや請求の仕組みとつながっていないと、同じ内容を2回入力する手間が出ます。導入の前に、今の介護ソフトと連携できるか、解約したときにデータを取り出せるかを、ソフトの会社に確認することが大事です
- 見守りのカメラには、利用者と家族への説明が必要です。カメラやセンサーは、利用者に「見張られている」と感じさせることがあります。何のために、どんな情報を取るのかを利用者と家族に説明し、同意を得てから使い始めます
- 導入には初期費用と月々の費用がかかります。機器の本体のほかに、通信環境の整備や月々の利用料がかかることがあります。国と都道府県の補助を使うと、事業者の負担を抑えられます(5章「介護でAIを入れる費用と補助金」で解説します)
AIが減らすのは、記録の入力や夜間の見回りにかかる時間です。利用者への声かけや、表情の変化に気づいて対応するケアは、AIを入れたあとも職員が担います。減った時間をどのケアに回すかまで決めておくと、導入の効果を職員が実感しやすくなります。
5. 介護でAIを入れる費用と補助金
国の補助では、事業者が負担するのは導入費用の5分の1からで、申請先は都道府県です。令和7年度補正予算の「介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業」の仕組みです(厚生労働省の資料)。上限額は年度で変わり、募集の時期と細かい条件は都道府県が決めるため、申請の前に都道府県の募集要項の確認が必要です。
国の補助の仕組み
介護テクノロジーの導入の補助は、国が制度を作り、都道府県が実施しています。令和7年度補正予算では220億円が計上され、介護テクノロジーの導入にかかる費用は国と都道府県が5分の4、事業者が5分の1を負担する仕組みです。厚生労働省は、見守り機器、介護記録ソフト、インカムを「業務時間削減効果が確認されているため集中的に支援」すると説明しています。
令和7年度当初予算の「介護テクノロジー導入支援事業」(地域医療介護総合確保基金)では、補助の上限額が次のように示されています。
| 補助の対象 | 上限額(令和7年度当初の基金分) |
|---|---|
| 介護ロボット(移乗支援・入浴支援) | 1台あたり100万円 |
| 介護ロボット(上記以外。見守りなど) | 1台あたり30万円 |
| ICT(介護ソフト、タブレット、インカムなど) | 職員数に応じて100万円〜250万円 (1〜10人は100万円、31人以上は250万円) |
| 複数の機器を組み合わせて入れる場合 | 400万円〜1,000万円 |
出典:厚生労働省「介護テクノロジー導入・定着支援事業」。令和7年度当初の基金分の補助率は、要件を満たす場合は4分の3以上、それ以外は2分の1以上です。
補助の対象になるもの
補助の対象には、機器やソフトの本体に加えて、導入と一体で行う業務改善の費用が入ります。令和7年度補正の事業では、介護記録ソフトを定着させる費用やWi-Fiの整備費用も補助の対象です。令和7年度当初の基金分でも、「第三者による業務改善支援等にかかる経費」が補助の対象に入っています。
介護ロボットの補助では「第三者による業務改善支援又は研修・相談等による支援を受けること」が要件で、補助率を4分の3以上にする要件にも「第三者による業務改善支援を受けること」があります。令和6年度補正の事業の資料では、導入と一体で行う業務改善支援の例として「コンサルティング会社等による業務改善支援」が挙げられています。コンサルティング会社などの業務改善支援は、補助の要件になる場合があり、その費用も補助の対象に入ります。
どの製品が補助の対象になりうるかは、公益財団法人テクノエイド協会が2025年1月から製品の情報をカタログの形で掲載しています。国はこのカタログを、事業所が製品を選ぶ手助けと、申請書類の簡素化に使うことを見込んでいます。
申請と相談の窓口
補助の申請と、導入の相談の窓口は都道府県です。都道府県は「介護生産性向上総合相談センター」を設け、相談への対応、研修会、有識者の派遣、介護ロボットの展示や試用の貸し出しを行っています。厚生労働省の資料(令和8年3月2日)では、令和8年度までに全ての都道府県に設置する予定です。国の資料は、事業所の課題として「どのようなテクノロジーを導入したらよいかわからない」を挙げています。どの機器を入れるか決める前の段階で、最初に問い合わせる先として使えます。
AI導入支援の会社に業務の見直しや研修を頼む場合の費用の目安は、AI導入支援の費用相場で解説しています。

6. 自社で進めるか、外に相談するか

介護でAIを入れるときの相談先は、自社で進める、都道府県の相談窓口、介護ソフトや機器の会社、AI導入支援の会社の4つです。どこに相談するかは、始める業務を事業所の中で決められるかと、AIの答えを確かめる職員を置けるかで変わります。
相談先は4つ
| 相談先 | してくれること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 自社で進める | 生成AIや介護ソフトのAI機能を 職員が試す | ソフトの利用料 | 減らしたい業務が決まっていて、 試す職員がいる |
| 都道府県の相談窓口 | 相談、研修会、有識者の派遣、 機器の試用の貸し出し | 都道府県の事業 (費用は窓口で確認) | 何から始めるかを 決める前の段階 |
| 介護ソフトや機器の会社 | 自社の製品の設定、 使い方の説明と研修 | 製品の費用 | 入れたい製品が 決まっている |
| AI導入支援の会社 | 業務の切り分け、複数の道具の 組み合わせ、研修、仕組みの開発 | 支援の費用 | 業務の見直しから 任せたい |
介護ソフトや機器の会社は、自社の製品に詳しい相談先です。見守り機器と記録ソフトとインカムを別の会社から入れて連携させたい場合や、生成AIで事業所に合わせた仕組みを作りたい場合は、AI導入支援の会社が合います。AI導入支援の会社は、業務の整理から研修、仕組みの開発までを引き受けます。AI導入支援の会社が何をしてくれるかは、AI導入支援とはで解説しています。
介護・看護・福祉の支援事例を公式サイトに載せているAI導入支援の会社
編集部が、AI導入支援のおすすめ11選で紹介している会社の公式サイトを確認した範囲で、介護・看護・福祉の事業者を支援した事例を載せている会社を紹介します。表の内容は各社の公式サイトの記載で、順不同です。
| 会社名 | 公式サイトの事例 | 対象の業務 |
|---|---|---|
| AVILEN | 「【AI変革事例_看護・介護業界】生成AI活用とRPA連携による看護業務の月報作成効率化システム」。1患者あたりの月報の作成時間を「数十分から約5分に短縮」(公式サイトの掲載日 2026年3月12日) | 訪問看護の日報の要約と 月報の入力 |
| ギブリー | 就労移行支援と自立訓練を行うインクルード株式会社の事例。「従来の10分の1程度の時間で質が高い文書を"誰もが"作成できるように。」(ページに掲載日の表示なし) | 面談記録の要約と 社内文書の作成 |
2社の事例は、どちらも記録や文書の作成という、介護・看護・福祉の事業所で時間を取られやすい業務を対象にしています。ギブリーの事例は、利用者の個人情報を含む面談記録を扱っています。問い合わせでは、利用者の氏名や病歴をAIに入力しないための工夫や、入力した内容をAIの学習に使わない設定を、支援会社に確認すると安心です。各社の料金とほかの導入事例は、AI導入支援のおすすめ11選にまとめています。
7. 自社で進めるのが向く事業所・外に相談するのが向く事業所
どちらが向いているかは、始める業務を事業所の中で決められるか、AIの答えを確かめる職員を置けるかで分かれます。事業所の状況ごとに整理しました。
自社で進めるのが向く事業所
- 減らしたい業務が決まっている事業所。記録の入力や会議録の作成のように対象が決まっていると、試す道具を選びやすく、減った時間も数字で確かめられます
- AIの答えを確かめる職員を置ける事業所。記録や叩き台を確定する前に読み直す職員がいれば、AIの間違いを現場で直せます
- 今の介護ソフトに、音声入力やケアプランの叩き台を作る機能がある事業所。ソフトの会社に設定を聞くところから始められます
- 試す役の職員が1人いて、週に数時間を使える事業所。その職員が使い方を覚えて、ほかの職員に教える役を担えます
外に相談するのが向く事業所
- どの業務から手を付けるかを決められない事業所。都道府県の相談窓口で、業務の洗い出しと機器の試用から始められます
- 見守り機器、記録ソフト、インカムを組み合わせて入れたい事業所。別々の会社の製品をつなぐ設計は、複数の道具の組み合わせを手伝うAI導入支援の会社に頼むと進めやすくなります
- 申請する補助の募集要項に、第三者による業務改善支援の要件がある事業所。業務の見直しを一緒に行う会社に頼むと、計画づくりと導入を合わせて進められます
- AIの答えを確かめる職員を、今の人員では置けない事業所。確かめ方の決まりづくりや職員への研修から、外の会社に手伝ってもらえます
- 職員の研修を外に任せたい事業所。生成AIの使い方や個人情報のルールを、研修として職員に教えてもらえます
外に相談するのが向いていると感じたら、まず都道府県の相談窓口に問い合わせ、業務の見直しから手伝ってほしい場合はAI導入支援の会社を比べる段階です。AI導入支援のおすすめ11選で、各社が支援した会社の状況と一緒に確認できます。

8. 介護のAIに関するよくある質問
介護でAIを入れるときの補助金はいくらですか?
国の事業(令和7年度補正)では、事業者の負担は導入費用の5分の1からです。残りの5分の4は国と都道府県が負担します。別の事業である令和7年度当初の基金分(介護テクノロジー導入支援事業)では、見守りなどの介護ロボットは1台30万円、介護ソフトなどのICTは職員数に応じて100万円〜250万円が上限でした。金額と募集の時期は都道府県ごとに違うため、申請の前に募集要項の確認が必要です。
今使っている介護ソフトでAIを使うにはどうすればいいですか?
今の介護ソフトにAIの機能があるかを、ソフトの会社に確認します。音声で記録を入れる機能やケアプランの叩き台を作る機能の有無と、追加の契約が要るかは、介護ソフトごとに違うためです。AIの機能がなければ、介護ソフトとつながる記録のアプリや、生成AIを別に使う方法も選べます。
介護のAIは無料で使えますか?
生成AIには、無料のプランで文章の生成や要約ができるものがあります。研修資料や家族への連絡文の叩き台、会議録の要約が、無料のプランで試せる使い方です。使える機能と、入力した内容の扱いは、提供元の規約で決まります。無料版に利用者の氏名や病歴を入力すると、個人情報が事業所の外のサービスに送られるため、名前を伏せて入力するルールが必要です。
職員が10人以下の訪問介護の事業所でもAIは使えますか?
使えます。記録の音声入力と、生成AIでの文章づくりは、職員が10人以下でも小さく試せる業務です。補助のICTの上限額にも、職員1〜10人の区分(令和7年度当初の基金分で100万円)が設けられています。令和7年度の厚生労働大臣表彰では、介護記録と研修のDX化に取り組んだ訪問介護の事業所が、1人あたりの訪問件数を6.6件(平成29年)から7.4件(令和7年)に増やした例が紹介されています。
介護ロボットとAIの違いは何ですか?
介護ロボットは機器の呼び方で、AIは機器に入っている判断の仕組みの呼び方です。国の「介護テクノロジー利用の重点分野」は、移乗や見守りのような機器の役割で分かれていて、AIが入っているかどうかでは分けていません。介護ロボットの補助の対象かどうかは、この重点分野に当てはまるかで決まります。
9. まとめ
介護でAIが使えるのは、記録・申し送り・会議録などの文章づくり、夜間の見守りと排泄の予測、ケアプランやシフトの叩き台です。どの業務でも、AIが出したものを職員が確かめ、利用者のケアの判断は職員が行います。導入の前に、利用者の情報を入れるルール、答えを確かめる職員、使い続けるための研修を決めておくことが必要です。
減らしたい業務が決まっていて試す職員がいる事業所は、今の介護ソフトのAI機能や生成AIで試すところから始めましょう。何から始めるか決まっていない事業所は都道府県の相談窓口へ、業務の見直しから任せたい事業所はAI導入支援のおすすめ11選で支援する会社を比べられます。国の補助では事業者の負担は導入費用の5分の1からなので、申請の窓口である都道府県の募集要項もあわせて確認してみてください。
